第六話 遅れてきた蜜月

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「愛だけで桜花組の妻が務まると思っているの?」 「!」  雅さんは腕を組み、厳しい視線を向けて淡々と語る。 「桜花組は極道者だけど、警察に認められた立派な組織よ。汚れ仕事を請け負うこともあるけど、警察とは違った側面から市民を守っているの。組長の責務はとても重いわ。あなたはそんな和仁のことをきちんと支えられるのかしら?」  私はすぐに答えることができなかった。雅さんは続ける。 「桜花組には浅雛(うち)も含めて沢山の傘下、そして各地方に支部がある。組長は全ての頂点に立つの。そのこと、理解できている?」  私は正直組のことを何も知らない。  警察公認極道だということも知ったのは最近だし、具体的に和仁さんたちが何をしているのか想像もつかない。  お飾りの妻だった頃は私が踏み込むべきではないと思っていたけれど、雅さんにそんなことは関係ない。  次期組長の妻がこんなに頼りない人物では、心許ないのだろう。  私は、このままでいいのかしら……? 「雅さん、あまり姐さんをいじめないでくださいよ」  声をかけてきたのは、峰さんだった。  手におぼんを持ち、私たちの前に煎茶と茶菓子を置いてくれる。 「お茶菓子をお持ちしました。雅さんが好きな夢見堂の和菓子です」 「み、峰くん……」 「お言葉ですが、姐さんは素晴らしい女性ですよ。誰にでも優しく親切でよく気が付いて、組員たちは皆姐さんを慕っています。何よりうちの若が惚れ込んだ女性です」
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