第六話 遅れてきた蜜月

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 峰さんがそんな風に言ってくださるなんて……。  和仁さんに近い方に褒めていただけると、とても嬉しい。  思わず目頭が熱くなってしまう。 「ずっと和仁と一緒にいる峰くんが……本気でそう思ってるの?」 「ええ、何なら姐さんには感謝してるくらいです。姐さんと結婚して若は変わりましたから」  和仁さんが変わった……? 「若と姐さんなら、これからの桜花組を率いてくれると確信していますよ」 「……っ!」  雅さんは顔を真っ赤にして唇を震わせる。  その表情を見た時、あれ?と思った。  何だか雅さん、峰さんが来てから様子がさっきと違うような? 「いくら雅さんとはいえ、桜花組のことに口出しする権利はないと思うのですけどね」 「わ、私は和仁のことを心配して……っ!」 「お二人が幼少期からの幼馴染であったとしても、傘下の浅雛組が桜花組の本家に意見するのは出過ぎた真似かと」  峰さんは微笑んでいたけど、目は笑っていなかった。  口調も穏やかなようで冷ややかなものがある。  流石の私でさえドキッとしてしまった。 「……っ」 「それでは、自分はこれで失礼しますね」 「あ、ありがとうございました……」  最後は柔和な笑みを浮かべて去っていった。  峰さんはいつも朗らかな人だと思っていたけれど、やっぱり極道なのだなぁと思ってしまった。  これからどうしましょう、と雅さんの方を見て驚いた。  なんと雅さんはポロポロと涙をこぼしていたからだ。
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