第六話 遅れてきた蜜月

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「雅さん!?大丈夫ですか?」 「……っ」 「あ、あの、峰さんの言い方は少しきつく聞こえたかもしれませんが、本当はすごく優しい人で」 「そんなこと、あなたに言われなくてもわかってるわよっ!」  泣きながらも大声をあげる雅さん。 「峰くんはずっと和仁の一番近くにいて、右腕として支えてきたんだから……和仁の影に隠れがちだけど、冷静かつ聡明で交渉にも長けていて。軟弱に見られがちだけど、和仁に負けず劣らず強いのよ!」  そう言ってわんわん泣く雅さんを見ながら、閃いたことがあった。  もしかして雅さん、訪ねてきた本当の理由は―― 「峰さんのこと、好きなのですか?」 「!!」  耳まで真っ赤にする顔を見て、確信した。  ああ、やっぱりそうなんだ。 「〜〜っ、和仁が結婚したことも驚いたけど、それ以上に峰くんがやたらあなたを褒めるのよっ。嬉しそうに、ニコニコしながら!だからあなたの顔を見てやりたかったのっ」  悔しそうに涙を浮かべる彼女を見て、なんて可愛らしいのだろうと思った。  彼女はただ必死だったんだ。  好きな人に振り向いて欲しくて。 「雅さん、素敵な方なんですね」 「どこが!?私のことバカにしてるの!?」 「いいえ、一生懸命に恋をしている姿が素敵です。好きな人を思っていっぱいいっぱいになってしまう気持ち、すごくわかります」 「わかるって、和仁とは政略結婚だったのに?」 「私、和仁さんに一目惚れだったんです」
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