第六話 遅れてきた蜜月

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 今思えばそう、初めて会った時には既に恋に落ちていた。 「それから段々と和仁さんの内面を知って、もっと好きになりました。今もずっと恋してるんです」 「……私も一目惚れだったの」  雅さんはポツリポツリと話し始める。 「父に連れられて初めて桜花組に来て、そこで初めて出会ったの。峰くんは当時から極道らしくない柔らかさとしなやかさを持っていて、一瞬にして惹かれたわ。全然笑わない和仁と比べて、よく笑う人だったし」 「和仁さんも笑いますよ?」 「ええっ!?嘘でしょ?」 「意外とよく笑ってくれますけど……」  雅さんは信じられないと言わんばかりに呆気に取られていた。 「あなた、すごいのね」 「え?」 「和仁、私になんて言ったと思う?ジェシカに無理強いさせるなって。まるで私が最初からいじめるみたいに言ってきたのよ」  あの時、そんなことを囁いていたのね……。 「本当にあなたに惚れ込んでるのね」  そう言われて、照れ臭かったけど嬉しかった。  それから雅さんと沢山お話をした。話せば話す程、雅さんは可愛らしい人なのだとわかる。  何年もずっと片想いしているのに、浅雛組組長の娘としてしか接してもらえない、と寂しそうな雅さんはとてもいじらしかった。  いつの間にか長い時間話し込んでいたようで、ついに和仁さんが様子を見に来た。
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