第七話 夫婦の形

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 全く悪びれた様子など見せない信士さんに、和仁さんは深い溜息をつく。 「……こうなるから嫌だったんだ」 「和仁さんも今度我が家へいらしてください。改めて結婚祝いをしますわ」 「そうだ、今度の日曜にしよう」 「おい、勝手に決めるな」 「十二時に我が家へ集合だ。それじゃあ私はそろそろお暇しよう。お待ちしていますね、ジェシカさん」 「は、はいっ」  一方的に決めてしまうと、信士さんは立ち去っていった。  蘭さんも生け花の続きがあるから、と戻られてしまう。  何だか嵐が過ぎ去った後みたいだ。  和仁さんはもう一度深い溜息を吐いていた。 * * * 「満咲家は旧華族の末裔という由緒正しい家柄で、代々警察官という家系なんだ」  その日の帰りの車の中で、和仁さんは信士さんのことを教えてくれた。 「あんなやつだが意外に有能でな。将来は警視総監だと言われている」 「すごい方なんですね」 「満咲家は警察界隈では揺るぎない権力を持っている。それ故に代々桜花組と染井一家を管理する立場にあるんだ」  桜花組と染井一家を警察公認の組として認定したのが、当時の満咲家の当主だったらしい。  両組が裏の組織として動けているのも、対立する両組が均衡を保っているのも、満咲家の管理下にあるからなのだそうだ。
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