第一話 極道の妻

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 和仁さんは、私の目を見てはっきりと言った。 「君が生活しやすいように環境の配慮はする。 だが、俺はもう誰も愛さない。君とは書類上だけの夫婦だ」  私の目を見てそう言った彼のことを、場違いにもなんて誠実な人だろうと思った。  取り繕うことなくはっきりそう言ってくれるなら、こちらも余計な期待をしなくて良い。  偽りの愛の言葉を並べられるより、ずっと誠実だと思った。 「心得ました」  私はニコリと微笑んだ。  和仁さんは一瞬面食らったような表情をしたけど、すぐにいつもの仏頂面に戻った。  こうして私たちは書類上だけの夫婦になった。  愛のない政略結婚、それも極道に嫁ぐことになるなんて思ってもみなかった。  それでもこれは私自身が選んだ人生だから。 「ジェシカ、生きていれば嫌なことも辛いことも、思い通りにいかないこともたくさんある。 でも、自分の進む道に誇りを持ちなさい。それがどんな道だろうと、私はジェシカの味方でいるから」  亡くなった母の言葉を思い出していた。  マムはきっと、私が決めた道を応援してくれるはず。  天国から見守っていてね。  私は私なりの幸せの在り方を見つけるわ。  極道の妻になったからって、不幸になるとは限らないもの。  自分の幸せは自分で決める。  マムの言葉を胸に、私は新たな生活を始めることになった。
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