第七話 夫婦の形

12/14
前へ
/85ページ
次へ
 素直に、気持ちを……。  確かに自分の気持ちを全部は言えてないかもしれない。  嫌われてしまったらどうしようって思って、不安になるから。  でも夫婦なんだもの、何でも言い合えるようにならないとダメだ。 「私たちなんてしょっちゅう言い合いしてるわよ」 「そうなんですか!?」 「ええ、話し合う時はとことん話し合うって決めてるの。でもそれがスッキリするのよね」 「何だか羨ましいです……」 「大丈夫よ、夫婦には色んな形があるんだから。ジェシカさんたちはきっと、これからなのね」  確かに私たちは順序が違った。  恋をしてから結婚するのではなく、結婚してから恋をした。  恋人同士だったわけでもないし、何なら今が正にその期間なのかもしれない。  それに私は、まだまだ和仁さんのことを全部知っているわけじゃない。 「あの、こんなこと蘭さんに話していいのかわかりませんが」  私は以前染井一家の組員に拉致されたことを話した。  蘭さんは信士さん伝で少し聞いていたらしく、「怖い思いをしたわね」と優しく気遣ってくれた。 「あの人、染井の別の支部へ飛ばされたみたい。本来はクビになるところだけど、夫が取り成したそうよ」 「そうなんですか」 「はっきり言って規約違反ではあるんだけれど、一応こういう世界だから野放しにせず、管理下に置くことにしたみたいね」  私はその辺りのこと、何も聞かされていなかった。  ただもう大丈夫だから安心していいと、優しく抱きしめてもらった。  それは嬉しかったけど、でも。 「蘭さん、どうして桜花組と染井一家は対立してるんですか?」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

597人が本棚に入れています
本棚に追加