第七話 夫婦の形

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 そのままグイグイ引っ張られて車に乗せられる。  運転席に座る和仁さんは、いつもより仏頂面だった。 「……あいつに何を吹き込まれたんだ」 「え、いや……」 「余計なこと言っていたんじゃないだろうな」 「和仁さんのこと、信じてやって欲しいって」  そう言うと和仁さんは虚をつかれたような表情になる。  それから私から視線を逸らし、再び不機嫌そうになった。 「いらんことを」  桜花組と染井一家が対立している理由、それが和仁さんの過去と関係あるのかもしれない。  でも、多分私には話したくないのだと思う。  きっと何か事情があるのだと思うし、無理に聞くべきではないと思うけれど……やっぱり寂しい。 「ジェシカ、もう少し待っていてくれないか」 「……え、」 「いつかきっと、話すから」  私の目を見てそう言った和仁さんの漆黒の瞳は、ほんの僅かに揺れているような気がした。  切なげに見つめてくる彼は、何かと葛藤しているようにも窺える。どこか儚く、何故か消え入りそうな気がして私は思わず和仁さんの手を取った。 「……待ってますね」  私を信用していないわけじゃない、多分和仁さんにとって大きな勇気がいることなのだと思う。  その時思った、私も和仁さんに嫌われたくないと思ったように、和仁さんもまた全てを曝け出すことを恐れているのかもしれない。 「大好きです、和仁さん」  私は私なりに、和仁さんを支えよう。  私たちはまだ夫婦として歩み始めたばかりだから。少しずつでいい、私たちだけの夫婦の形を見出せていきたい。  和仁さんは返事をする代わりに優しく微笑む。  そして私を抱き寄せ、額にキスを落とした。  私は何があっても、和仁さんを愛してる。
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