1.どうしてもと、言うならば

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 もしこれが私の家なら水くらいぶっかけていたのだが、ここは他の客もいるカフェだからと必死に自身を抑え込む。  亮介はというと、私が何も反論しない事をショックを受けているからだと思ったらしく、見下すようなニヤニヤ笑いを顔に浮かべた。   「それに何が一番つまんないって、セックスだよな。女はただ寝転がってれば気持ちよくして貰えるとでも思ってんの? まぁ仕方ないよな、お前俺が初めてだったもんな?」 「ッ」 「せめてもうちょっと経験積んだら? ま、そんなことが出来るならこの年まで処女じゃないか。せめて可愛く甘えておねだりできれば誰かは抱いてくれるんじゃね? 俺はごめんだけど。じゃ、俺たちはこれで終わりってことで。騙した詫びとしてここの代金くらいは払えよな」  言うだけ言って満足したのか、フンッと鼻で笑った亮介は頼んでいたアイスコーヒーを一気に飲み干しそのまま席を立つ。  もちろん伝票は置いたままだ。 “せめて自分の分くらい払っていきなさいよ……!”    怒りを通り越して呆れていたはずが一周回って再び怒りで目の前が真っ赤に染まる。  
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