エピローグ:その偶然に名付けるのなら

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 うーん、と唸りながらガラスとにらめっこしていると、ふとそのガラス越しに視線を感じて目線を落とす。  なんとそこにはコーヒーを手にした光希がいた。 「お疲れ様、朱里」 “せめて手鏡で確認すれば良かった……!”  私の姿を見てカフェから出てきた光希は、堪えきれないクスクス笑いを溢している。 「いつから見てたの」 「あっちの通りから走ってきたあたり」 「嘘!」  最初から見られていたことに愕然としていると、私の毛先をそっと掬った光希がふわりと微笑んだ。 「凄い偶然だと思わない? ちょっと早く着いたからカフェに入ったら、俺の席の目の前で恋人が俺に会うための最終チェック始めるんだよ」 「それは……その、確かに偶然ね」  私としては恥ずかしいところを見られたと羞恥心が刺激されるのだが、どうやら本気で感心しているらしく光希の表情は明るい。 「思えば朱里とはずっと色んな偶然が重なってたよね」  しみじみと続けられたその言葉に、私も彼との今までを思い返し、確かにと頷いた。  亮介にフラれた時に偶然居合わせた男性、それが光希だった。
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