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彼は文章を書く魔法使いである。
彼が書いた文章を読むと、いつの間にか気持ちよくなってしまう。
そうなることを彼は美文字酔いと呼んでいる。
美文字酔いは個人差があるので、誰にでも効くわけではないらしい。
効かない人には、まったく効かないようである。
彼は全員に効くことを期待していないかのように平然としている。
効く人に効けばいい、と彼は割り切っている。
だが、ひとたび彼の表現が美しいと思ってしまうと、読めば読むほど美しい表現だと思ってしまう。
まるで彼の耽美な海に溺れていくかのようである。
溺れるように時を忘れて読みふけってしまう。
果てしない彼の海に溺れていく。
そうなるように彼が書いているのではないかと思うほどである。
そう思うのは、ますます彼の海に溺れていくのが分かるからである。
そして美文字の魔法に、かかってしまう。
ひとたび魔法にかかってしまうと解けないで欲しいと願ってしまう。
それが彼のねらいなのかもしれない
今宵も彼の美文字の魔法が続く
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