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「じゃあさ、その本って面白いの?」
「ああ、面白いぞ。」
「へぇー、どんな話?恋愛物?」
「いや、違うな。ミステリーだ」
“へぇー”と玲はつまらなそうに返事をするが、ヒューゴの読む姿を凝視する。その視線に反応しないようにするが、先に耐えられなくのるのはヒューゴで、呆れてため息を吐くまでがいつもの流れ。
「はぁ、そんなに気になるなら読むか?ほら」
ヒューゴは本を差し出す。玲は嬉しそうにそれを受けとると、パラパラとめくり始めた。
しかし、それはすぐに終わり、パタンと音を立てて本を閉じたかと思うと、玲は肩をすくめて本をヒューゴに返す。
「気に入らなかったか?」
「いや、まず読めないから。それ英語じゃん」
ヒューゴは玲がこんな物語程度の英文を読めないことを知らずにいたので、それは失礼したと謝罪をする。玲の周りの数名の男二人は余裕でこれを理解していたからてっきり玲も英語が得意かと思っていた。
そういえば、その男共は二人とも研究者だ。英語の論文を読む機会もあるのだろう、読めて当然だ。
「でもヒューゴにとってはこれのが馴染みのある言語なんだよなぁ。……なぁ、英語でさ、“I love you”以外に愛を伝える言葉ってあるのか?」
玲の質問にヒューゴは驚くが、そこは大人だ。何にも動じていないよう振る舞う。
「なんだ、唐突だな。誰かに告白でもするのか?」
「まさか。いや、日本語はさ好きとか愛してるとか、一緒にいたいとか?そんな風に想いを告げるじゃん。英語はそーいう風なのどんなのがあるのかって、ただの興味本位」
玲の顔はケラケラと笑っていて、本当に他意がないのだとわかる。ヒューゴは考えた。愛を伝える言葉の他の言い回しを。もし、自分が玲に告げるのなら……どんなことを……。
「そうだな、愛を伝える言葉は沢山あるが、相手によってその言葉も変わってくるだろう」
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