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“自分で選べ”と自由への選択肢を与えてくれた。
それは、自分自身を大事にしろと教えてくれたのと同義。ヒューゴはルールや建前など自身が守ってきたものを捨て立ち上がった。
そして、自分で玲と共に進むことを選んだ。
玲はそんなヒューゴを嬉しそうに受け止めてくれたのである。
玲には不思議な魅力があるとヒューゴは思っていた。
玲の周りには彼女を取り囲むように数名の男女がいる。
全員が玲を守るように己の立ち位置を見極めて、尚且つ玲の笑顔を絶やさぬようにしている。
玲には自覚はないだろうが、人を惹きつける何かがある。
そして、ヒューゴもその魅力に心奪われた一人だ。
自分に自由を教えてくれた玲。
自由な彼女にどうしようもなく惹かれてしまうその心を抑えて、ヒューゴはその気持ちをなかったことにする。
10も歳の差がある。
大人の自分とまだ少女の玲。
踏み越えてはならない一線を守るために、玲と距離をおいて過ごす。
それが、玲と共に生きていくと決めたヒューゴの課したルールだ。
それなのに玲はヒューゴがのばした心の距離を、いとも簡単に飛び越えてくる。
今日もまた、玲はヒューゴに話しかけた。
「なぁ、ヒューゴ。今日はなんの本を読んでるんだ?」
「何を読んでいるように見えるんだ?」
玲はいつもこの質問をする。それに対していつも同じ返しをするヒューゴだが、そろそろネタも尽きてくる頃だ。しかし、その質問に毎回律儀に返す彼も真面目で真っ直ぐなのだろう。
「んー、ヒューゴのことだから英国紳士の嗜みか厳しいルールブックとか?」
「ほう、つまり貴女は私が今更そんな本を読み自身の知識にしようと思うほど、みくびっているのか?」
「うーん、そんなことは思いません」
「正解だ」
ヒューゴはまた読書に戻る。が、玲はお構いなしに話しかけてくる。
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