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“好き“だと……。それは親愛からくる言葉だろう。仲間として、友として、好きだという意味なのだろう。でも……それでも……その言葉が嬉しいと思ってしまったら、ヒューゴはもうダメだった。
距離をおかなければならないのに。
玲との、距離がのびる度に胸が締め付けられそうになっていた自分自身に、ヒューゴは気づいていた。
この想いに蓋をして鍵をかけて……なかったことにしようとしていたのに。
そんなヒューゴの心を見透かしたように玲は言うのだ。
「なぁ、私のこと好き?」
「……貴女のことは仲間として信頼してる」
視線を逸らしつつ、そう、恋愛感情ではないと言おうとするヒューゴ。それを遮って玲が続ける。
「そんなことは当然だろ。そうじゃなくて、ヒューゴ。こっち……みろ」
「っ……」
ヒューゴは玲に促されるまま、彼女を見る。そこには、いつものおちゃらけた顔はなく、真剣な眼差しの彼女がいた。
その真っ直ぐな視線から目が逸らせない。
「私のこと好きなのか?」
「〜〜っあぁ、そうだな」
とうとう、口を出てしまった感情にヒューゴは顔を赤くして、舌打ちをする。
「だから、どうしたというのだ?私は大人で貴女は子どもだ。このままが丁度いいだろう」
「……それが嫌だって言ったら?」
ヒューゴの答えに玲は挑戦的な目を向ける。
「あいつらにも言ってることだけど、私の気持ちを勝手に決めるな」
心は移ろうもので、未来はわからないのだからと玲は笑う。
その笑顔が眩しくて、ヒューゴはたまらなくなる。
「ところで、甘いものを食べに行きたいんだけど?」
ニヤッと玲が悪戯っ子のように笑うのを見て、ヒューゴはため息を吐くと、穏やかな声で返した。
「エスコートさせていただくよ」
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