はこのなか

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 その家には、年老いた老人が一人で住んでいた。  噂によると、以前は妻と息子と息子の妻との四人暮らしだったらしいが、今は、こいつだけが家にとり残されているらしい。  近所の噂によると、爺は息子夫婦とそりが合わず、結局妻だけ息子夫婦と同居をするために、ここ離れたんだとか。  まあ、見た目も汚らしい偏屈そうな爺だったから、息子嫁が嫌がって別居になったんだろうってのが、俺の予想だ。  他の住人達も、多分俺と同じようなことを思っていたみたいで、一人で暮らす小汚い爺に関心を寄せる奴はほとんどいなかった。  なんせ、爺がくたばってねえか確認しにきた民生委員を、「箱が……箱が……」とか意味不明なことを言って追い返すような偏屈爺だったからな。  それに、時々買い物とかで外に出ているときなんかは、箱がなんとか、などとブツブツ呟いているらしいし、完全にボケはいってるだろ。  だがこいつ、資産家だった。  こんな老い先短い爺に使われずに消えていく金がもったいない。  ってことで俺は、悪友AとBを誘って、この家に強盗に入ることにした。
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