確かに愛を謳っていた。

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確かに愛を謳っていた。

 ご存知だろうか。  この日本という国には、影で国を守ってくれるヒーローたちがいるということを。  素早い動きと隠密活動が得意な忍者の末裔。  剣術、武術で時に要人の警護をし、暗殺を未然に防ぐ侍の末裔。  それから――遠い昔に日本に渡ってきて、その魔法の力で国を助けてきた魔女の末裔。  槇村(まきむら)家には、そんな魔女の血が流れている。見えない魔法の結界で国を外敵から守ったり、予言をしたり、時に科学では足らない人助けをするのが仕事だ。私、槇村愛(まきむらあい)もその魔女の血を引き継ぐ女の一人。婿として迎え入れた旦那・幸也(こうや)と、娘の沙耶(さや)、それから愛犬でコーギーの“とんかつ”(オス十二歳)。三人と一匹で毎日まったり暮らしながら、日々娘の魔法の特訓に付き合っていたのだが。  その日、我が家を大事件が襲ったのである。それは。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」  リビングで唐突に響き渡った声。ぼっふん!という音と共にぴんくいろの煙が上がり、どったんばったんと娘が暴れる音が聞こえた。  すわ、何事か、と洗面所から飛んできた私は。やがてその場に居合わせた旦那とともに、目ん玉をひんむくことになるのだ。  ドピンク色の煙が晴れていくと同時に見えてきたもの、それは。 「ばおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!?」  何故かパニック状態になって走り回っているコーギーと。 「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」  奇声を上げながら、四つん這いでリビングを駆けまわっている沙耶の姿だったのである。
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