確かに愛を謳っていた。

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「ばうああうあうあうあああああ、あうあうあうあうあう、ああああう、あああう、あおおおおん、あおおおおおおおん、ばう、ばうばう、ばうっ!」  当然、私はワンコでないので何言ってるかさっぱりわからない。  反対に、沙耶はというとなぜかカエル座りをして、足で自分の頬を掻いている。そして。 「はうっ!」  感動したような眼で私を見た。まさに、“初めて後ろ脚で顔が掻けた!感激!”とでもいうような。 「……うん、わかるわよ?コーギーは足短いものね……後ろ足で顔掻くの結構大変だもんね。でもさあ……」  なんてこった。私は机に突っ伏して轟沈するしかない。  どうやら魔法の失敗で、娘の沙耶と愛犬とんかつの精神が、入れ替わってしまったということらしい。 「ああうううううううう、うううううう、ぶううううううううう!」  とんかつ――否、とんかつの中に入ってしまったであろう沙耶が悲痛な声で叫ぶ。相変らず何言ってるのかさっぱりわからないが、多分翻訳すると“たああすけてえええええ!”だろう。彼女もまさか、自分と犬が入れ替わってしまうとは思ってもみなかったに違いない。  とりあえず。 「……私、明日パート休むわ。あと、沙耶の学校にも休みますの連絡入れます」 「なんか、その、すまん……」 「貴方のせいじゃないわよ、うん……」  魔法の使えない夫では、止めることもできなかったことだろう。私は引きつった顔でそう返すしかなかった。  ちなみに、沙耶の学校の担任の先生(三十八歳女性)は、我が家が魔女の一族であることを知っている。同時に、魔女という存在の大ファンだったりもする。  だから翌朝沙耶が休むと電話した時に、超直感で事情を悟って、わくわくした声でのたまってくれたのだ。 『お母様!今度はどのような魔法の失敗……いえ、事故が起きてしまったのでしょうか!?こ、これを機会に、御宅にダイナミックお邪魔します……じゃなかった、か、家庭訪問に行ってもいいでしょうか?ええ、それはもう、沙耶さんの御宅だけ特別に!』 「来なくてよろしい!」  ていうか、こんな有様の娘なんぞ他人に見せられるはずがない。  沙耶は段々眠くなってきたのか、リビングの床に仰向けにひっくり返っていびきを掻いている。そりゃあ、元はジイちゃん犬ではあるけども!
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