確かに愛を謳っていた。

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 ***  とりあえず、夫にはいつも通り会社に行って貰った。婿養子の彼は、この家で唯一魔法が使えない。魔法でのトラブル解決に役立つことができない、というのは彼が一番よくわかっていることだろう。  とりあえず、今日は一日娘の姿をした犬を見張っていないといけない。 「……この場合、餌はどっち用意すればいいのかしら」  朝っぱらから、私は固まることになった。  手元にはドッグフードと、娘の朝食用のヨーグルト。  沙耶の姿をした犬、にはどちらを食わせるべきなのだろう。体が沙耶なのだから、人間用のご飯でもいいのだろうか。いや、しかし彼等が実際どういう状態なのかわからない。本当に精神だけ入れ替わっているのか、それとも。 「うー」  その沙耶(とんかつ)はといえば。  さっきからリビングのテーブルの前で、ものすごく不機嫌そうに唸っている。どうしたんだ、と思ってそちらに向かった私はお座りをした体制でじっと自分の体を見つめている様子。そして、突然。 「ああああああああああだめえええええええええええええええ!」  自分のパジャマの袖に噛みついて、引っ張り始めた。私は慌てて止める。  忘れていた。そうだ、沙耶の姿をしているから咲耶もパジャマに着替えて寝かせたけれど――本来のとんかつは、服を着るのがだいっきらいな犬なのである。服を着せられた途端、機嫌が悪くなってまったく動かなくなってしまうし、散歩にも行かなくなってしまうのだ。 「お願い、お願いよとんかつ!そのパジャマ高かったんだから、破かないで!」 「いいいい、や!や!」 「それ、沙耶のお気に入りのパジャマだし、ね!?」 「うう、やあっ!」  沙耶(とんかつ)は、首を横にフリフリして嫌がっている。いくらカーテンを閉め切っていても、十二歳の娘を全裸にして歩き回らせるのはさすがにしんどいものがある。 「ううっ」  私が止めているのがわかったからだろうか。沙耶は私をぎろりと睨むと、そのまま四つん這いでリビングの隅に向かった。  まさか、と冷や汗をかく私。そこには、ペットシートを敷いたとんかつ用のトイレが。  沙耶は四つん這いでペットシートの上まで行くと、ズボンを履いたまま右足を高く掲げる。そして。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」  ああ、何回悲鳴を上げればいいのだろう。  直後、私は沙耶を抱えて風呂場に駆け込むことになる。当然、パジャマとパンツは着替えさせることになってしまった。なお。 「あうあうあうあ、あうあうあうあ、ばうううううう……!」  沙耶を風呂で丸洗いした私が見たものは、そのペットシートの上で悲痛な声を上げながらトイレをしているとんかつの姿。  多分、“こんなところでおトイレなんて、私もうお嫁に行けないいいいい!”とでも言ってるのだろう。あまりにも不憫である。
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