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「たのもー!」
「なんだよ、それ」
サーカスの一座を訪れて、私が叫べば猫姿のミネがすかさずつっこんできた。
「一度でいいから、言ってみたかったんだ」
「どうでもいいから、真面目に試験をしろ!」
そんな会話を交わしているうちに団長のリオンがテントから出てきた。
「またお前か、何度来ても同じだ。帰ってくれ」
「待って下さい、どうしてサーカスやめちゃうんですか? それだけでも教えて下さい!」
「……もう、おしまいなんだよ。サーカスも、グホンも……」
真剣な眼差しで呟いた言葉に私は押し黙ってしまう。リオンは、そのままテントの中へと戻っていった。
「グホンさんが関係してるってこと?」
「だろうな、グホンのところへ行ってみよう」
私は頷いて指輪から羅針盤を出すと、グホンがいる場所を教えてもらい、そこへ向かった。グホンは、あいかわらず落ち込んでいるようすで広場のベンチに座り込んでいる。
「グホンさん!」
「あ、天の使者様……」
様付けで言われたことに思わず、舞い上がったがミネに睨み付けられてたたずまいをただしてグホンに告げた。
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