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「やっぱり、リオンさんから聞き出せませんでした。すみません」
「いえ、こちらこそ、わざわざ私事なのに真摯になっていただいてありがとうございました。団長が決めたのなら、仕方ありません。それでは」
そういってグホンは、とぼとぼと歩いて行ってしまう。
「なにか出来ることがあればいいのだけれど」
そうだ、と思い立ち私は指輪に口づけを落とすとポンという音と共に耳当てがあらわれる。
「おまえな」
「いいじゃん、いいじゃん」
私は笑ってごまかして耳当てをあてる。すると、私が思っているところの音を聞くことが出来るのだ。
『はあ……グホンには悪いが、サーカスはもうおしまいなんだ。最初は盛況だったが、グホンの考える芸は誰にも、うけない。だからといって、親友であるグホンのいないサーカスなどしようとは思えない』
「そっか、そうだったんだ……」
リオンの言葉を聞いて私は思わず呟いていた。
「どうにかして、リオンさんの思いをグホンさんに届けられないかな」
「………」
「そうだ!」
私は声をあげるとまた指輪に口づけを落とした。
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