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そうなのだ。人の心をうつしだす手紙をグホンに渡して、心のうちを知りたい相手を思い浮かべるよう助言したのだ。
見事、手紙はリオンの心をうつしだして、グホンに思いを届けてくれた。
「えっへん!」
「いばるなよ」
あきれてミネがつぶやいたけれど、私はそんなこと気にならないくらい二人が仲良くしていることが嬉しかった。
そのとき――二人のこぼした涙がかさなって宝石のように形をなしてきらめいた。
「ベル」
「うん!」
私はガラスの小瓶をとりだして、フタをあけた。瓶のなかにきらめきながら、その涙が入る。
「これで、この世界の欠片は回収した。次の世界へ行くぞ」
「うん、行こう!」
私はひるがえして、“月の影”へと入っていった。
***
「どうかしたのか?」
空を見上げるグホンにリオンが問いかける。
「なんでもないよ。ただ本当にあの子は不思議な女の子だなと思って」
「そうだな、本当に世話好きで変なやつだったな。今度、あったら礼を言おう」
「そうだね」
そう答えながら、グホンはあの子にはもう逢えない気がしていた。
(あの子は本当に天の使者だったのかな)
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