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ジョスランとラウリーヌ、ユベールの三人が揃うとさーっと周りが引いていった。
妬ましげに見てくる令嬢もいるが、ジョスランは気にする風もなくユベールからラウリーヌを受け取り、腰を引き寄せた。
「牽制がひどい。」
呆れるように言うユベールにジョスランは片眉を上げた。
「そうだ、すまないジョスラン。彼女に余計なことを言ってしまったみたいだ。」
「余計なこととは?」
ジョスランがユベールを軽く睨むと、ユベールが手を合わせて謝った。
「これはこれは、ベルジュラック殿ではないか!」
大きな手振りと身振りで一人の男が近寄ってきた。
「ご無沙汰している。ヴァリエ殿。」
男はジョスランのその言葉に微かに眉を顰めた。
「ラウリーヌ、北部のヴァリエ公爵だ。ヴァリエ殿、私の婚約者ラウリーヌだ。」
国に三人いる諸侯の一人、北部のヴァリエ公爵。立派なひげを蓄えた壮年のこの男は保守派の筆頭で、内乱では王都に近い西部の諸侯とともにローランド王太子側に付いた。今はその権勢を欲しいままにしているという。
多分、それで年若く王太子派でもなかったジョスランの物言いに眉を顰めたのだな、とラウリーヌは考えながら頭を下げた。が、ヴァリエ公爵は構わず喋り続けた。
「あの時は寝たきりだったと聞いていたが、今は健康そうでなによりだ。」
「ええ、おかげさまで。」
ベルジュラックが中立を保ったのにはジョスランの体のこともあった。混沌とした闘いに加わる余裕もなかったし、あの事件で当主嫡男が寝たきりになったのだ。南部貴族の誰もが王家に対して複雑な感情を持っていた。
「君もこうして宮廷に来るまで回復したのだから、これからは国王陛下のために働かなくてはな。」
「できる限りのことはしたいと思っているが、あなたのような忠臣がたくさんいるのだ。足手まといにならぬように田舎から貢献させてもらう。」
ヴァリエ公爵は不機嫌そうな顔を隠しもせず「どんな貢献をするのか今後楽しみにしている」と言って去って行った。
多くの貴族が南部と北部の権力者が顔を合わせているのを興味深く見ていたが、一瞬のざわめきが起き、静まるのと同時に人垣が割れて一人の少女が近づいてきた。
ラウリーヌと年齢は変わらないようだが、周囲に走る緊張感を見て、ラウリーヌも少し強張った。
ユベールが慌てて頭を下げ、二人もそれに倣い頭を下げる。
ジョスランは心の内で(次から次へと……)とうんざりしていた。
「ユベール、二人を紹介してちょうだい。」
「はい、ジョスラン・マルユス・ベルジュラック公爵とその婚約者ラウリーヌ・ゴーチェ嬢でございます。ジョスラン、ラウリーヌ嬢、こちらはアンジェル王妹殿下だ。」
国王に似た亜麻色の巻き毛に青い瞳、小柄で可憐な人形のように美しい少女が、目を細めてジョスランとラウリーヌの二人を見つめた。
「ごきげんよう。確か、初めましてよね? わたくし、あなたに会いたかったのよ、ベルジュラック公爵。お兄さまの側近筆頭候補であり、わたくしの婚約者候補でもあったのに……惜しいこと。」
思いもかけない言葉に、ラウリーヌは息が詰まったようになった。
聞いてない。
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