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「華ってやっぱり、変わってるよね」  前の席にいる親友、千香ちゃんがそんなことを言った。視線の先には、私が読んでいる兵法書『孫子』。すでに何度も読み返しているけれど、何度読み返しても新しい発見があり面白い。  そう。私、秋月華は大の兵書好きである。 *  ここは桜宮高校。ごくごく平凡な高校で、とくべつ偏差値が高いわけでも無い。もちろん、とくべつ低いわけでも無いので不良がいっぱいいるなんてこともない。そんな高校に通う私も特別なことなんてなにひとつ無い。変わっていると周りから言われることがあるとすれば、兵法書を持ち歩いていることぐらいだ。 「変わってないよ。ちょーっと、『孫子』とか『三略』とか好きなぐらいで」 「それ、なに?」 「兵法書」 「あんたは、どっかと戦争でもするの?」  そんなわけないと私は首を横に振る。 「なにか起きたとき、これらを駆使するの!」 「やっぱり、どこかと戦う気じゃん」  半ばあきれながら千香ちゃんが言ったとき、先生が教室に入ってきていつのようにホームルームが進む。 「あー、それから再来週にはテストだから、しっかり勉強してくるように」
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