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 すっかり忘れていた私は、絶望の色を浮かべる。ホームルームが終わると、私は千香ちゃんに声をかけた。 「忘れてたよ~。千香ちゃんはもう勉強してたりする?」 「まっさかぁ。するわけないじゃん」 「だよねー……」  答えながら私は心に渦巻く不安を隠しきれない。こういうときこそ、『孫子』の力を借りようと本をひらく。 「なにか役に立つ言葉があるの?」 「孫子には、『用兵の法は、その来たらざるを恃むこと無く、吾れの以て待つ有ることを恃むなり』とある。つまり、山を張ったりしないで勉強すれば、大丈夫なはず!」 「おう、頑張れ~」  それから私は、必死にがんばった。がんばったはずだった……。  そしてテスト当日。 「あれ、華。今日は教室に来るのはやいな」 「ふふ、『凡そ先に戦地におりて敵を待つ者佚し、後れて戦地におりて戦いに赴く者は労す』だからね」 「とにかく、気合い入ってんだな」  と、千香ちゃんはつぶやいた。いざ、試験がはじまると。 (あれ? これ確か教科書に載ってたけれど、なんだっけ)  頭が真っ白になってしまったのだった。
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