前編

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 その日。私は唐突に思い出した。ここが乙女ゲームの世界であることを。 *  桜田学園高等部二年生、内海結(うつみゆい)は私の親友だ。加えて、この乙女ゲームの主人公である。  メインヒーローは、三年の菅原大樹(すがわらひろき)。いわゆる完璧キャラで、生徒会長。学園中の生徒から慕われている。次に幼なじみキャラの吉川智之(よしかわともゆき)。私たちと同じ二年生で、もう一人のメインヒーローだ。  攻略対象ではあるけれどもサブヒーローといった立ち位置なのが、智之の親友であり、前世の私が一番好きだったキャラ。東條匠馬(とうじょうたくま)。  続いて後輩キャラの水野宗太(みずのそうた)。はじめから主人公になついていて、かわいい子だ。彼の笑顔にはプレイ中、何度も癒やされた。  それで私の名は、熊崎あやは。主人公の親友ポジで匠馬ルートでは当て馬になり、あっけなく振られる役回りだ。  いくら同じ世界に生まれることが出来たとしても、振られる役回りなんてあんまりだ。……私は当て馬だけは回避しようと、間者として動き始めることを決意した。 「あやは、どうしたの?」
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