150年目の新人賞

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1980年代。 アイドル黄金時代と呼ばれた、芸能界華やかなりし頃。 スマホもネットもまだ夢物語。 新聞雑誌やラジオといった各種メディア、特にテレビは人々の生活に大きく関わる重要な情報源だった。 大人も子供も家族みんなが夕飯時から…… いや、どうかすると朝から就寝時まで、テレビの前に集まり「チャンネル権」を争っていたのだ。 ドラマ、クイズ、お笑い、バラエティ。 数ある番組ジャンルの中でも歌番組の人気は高く、子供からお年寄りまで誰もが知る大ヒット曲が毎年多数生まれた。 毎週ランキング形式で流行歌を発表する番組は、司会者の軽妙な進行の楽しさもあって裏番組が作れない程の視聴率を誇った。 年末恒例の歌合戦は、一度出場出来たならあと十年は歌手を続けられるとまで言われていたし、一年間で最も売れた歌と歌手を決定する賞レースなどは、六月頃には早々と受賞者を予想してファンは騒いでいたものだ。 それでは発表します! 今年の───! 大賞、歌唱賞、新人賞……! その瞬間の、若きアイドル達の笑顔は、涙は。 驚きと喜びの表情は。 そしてもちろん、その歌声は。 時は流れ、時代が変わり。 歌やアイドルの在り方が変わり、スポットライトを浴びたアイドルが人知れず引退しても。 当時を知る者達の胸に、今もはっきりと刻まれているのだ。 たかがアイドルの歌、と笑う事なかれ。 青春を賭けた輝きに、時代も流行りもあるものか。
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