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☆
「直子おばあちゃん、ほんとに俺も見たんだってば!夏休みの自由研究、アレにしようかな?」
「秀喜、恐ろしかけんそらすんな」
少年に、あれは何だと尋ねると、自分より詳しい人がいるからと家に招かれた。
直子はおばあちゃんと呼ばれているが、自分と変わらない年齢の様で何となく傷つく梨本。
とりあえず地元の人と話すきっかけを掴めたのは幸運だと思う事にした。
しかし、直子おばあちゃんと秀喜くんって……
年配者にしか分からないツッコミを入れたくなるが、ここは我慢だ。
「それで、梨本さんはなんでこぎゃん所に?」
まずはダメ元で聞いてみようか。
「ええ、実は『UTAYA』という歌手の大ファンでして……」
「そうなの?『UTAYA』なら、この町でも噂になってるよ!もしかして綾津の人じゃないかって」
「やっぱりそうなんだ?」
秀喜はスマホを取り出して、素早い指さばきで動画の再生を始める。
「ほら、「綾津小唄」なんてマイナーな歌を歌ってるんだよ!俺も『UTAYA』でこの歌初めて聴いたんだ。それに名前を逆に読むと綾津になるんだよ!
でもね」
「でも?」
「『UTAYA』が最近、有名になってからなんだ。さっきの「ひふみ橋」にお化けが出る様になったのは」
「いや、関係なくないかい?」
「それが、そうとも言い切れんとですよ」
スイカを持って来てくれた直子が言う。
「明治の頃の話のごたっとですが、あの「ひふみ橋」の近くで子供がとごえると妖怪が出る、て言われとったらしかとです」
「妖怪、ですか?」
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