タマ様の言うことにゃ

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タマ様の言うことにゃ

 その晩、夢にタマが現れて言った。 『とうとうバレてしまったわね。そうよ、朋代ちゃん。あたし、猫又になる修行中なの。人間の世で積んだ徳の分だけ、尻尾は伸びるのよ。猫又になれた暁には伸びた尻尾を分けて、二股の尻尾を作るの。猫又になった時、尻尾が短かったら格好付かないでしょ? だからあたしが徳を積む邪魔をしないでちょうだいね』  夢か現か、あやふやな意識の中で朋代は尋ねる。 「徳……って何よぉ」 『人間からたくさん愛情をもらって、そのお返しに癒してあげることよ。これがなかなか大変なんだから』  適度に加減の効いた対応が、人間を飽きさせず寵愛を得る秘訣だそうだ。  塩を効かせすぎると、朋代のように癒しに飢えてしつこくされるのが、少しばかり厄介だとタマはため息をつく。 『修行だからね、嫌なことだって多少なら堪えてみせるわ』 「面目ありません……」 『瑞志といるのだってね、朋代ちゃんの家にいた頃はできなかった平仮名や片仮名の勉強をいちからするためなのよ。読み書きのできる猫又は超エリートなんだから』 「そうなの?」 『そうよ。だから焼きもちなんて焼いていないで、あたしを応援してちょうだい』  はっと目を覚ますと、子供部屋で寝ていたはずのタマは、朋代の脇の下で丸まっていた。 「タマ……?」  願う気持ちが見せた夢か、はたまた猫又見習いの忍術ならぬ……術か──。  どうせなら、と朋代は後者に希望を託してみたかった。  そう思ったら、いつか来る別れの時が悲しいばかりでなくなる気がして、瑞志にも上手に話してやれるように思えたのだ。
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