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お母さんも語ってほしい!
校内の作文コンテストで、「ユニークで賞」をもらった瑞志の作文を読み返して、母の朋代はつんと口を尖らせた。
ダイニングテーブルの四脚セットの椅子の一つに、我が物顔で座っているタマの額を、指先でちょんとつつく。
「お母さんも、タマみたいに瑞志に想われたい。いいなあ、タマは!」
緑の瞳でぎろりと睨まれ、朋代はへえこらと頭を下げた。
「これはタマ様。失礼いたしやしたぁ」
分かればいいのよ、と言うようにタマはつんと顎を反らせる。朋代にしつこくされる前に椅子から下りると、瑞志の寝室に真っ直ぐ向かった。
卵色の毛並みに、濃淡のトラ模様が入った尻尾を目で追って、朋代はため息を零す。
「あーあ、昔はあたしが一番だったのに」
タマは朋代が中学時代に拾った猫で、実家でも朋代にしか懐かなかった。弟には「姉ちゃんだけズルい」と言われ、それが自慢だったりもした。
結婚して、新居に移ってからもタマと朋代の蜜月は変わらず、夫の大志にもよく「トモちゃんばかりズルい」と嘆かれたものだ。
まして子供など大の苦手だったはずなのに、タマはどうしてだか瑞志には、赤ん坊の頃から寄り添ってきた。
瑞志の顔のそばに丸まって、喉を鳴らしているタマを見て、朋代の焼きもちは焦げつきそうだ。
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