一緒にいたい

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一緒にいたい

 瑞志との仲の良さに嫉妬すると同時に、朋代には気がかりがあった。  タマの年齢だ。  飼い始めてから、もう十七年。野良生活を加味すると、推定十八歳の正真正銘の婆様なのだ。 「義務教育が終わるまで、か……」  あと、七年……指を折って、朋代は暗い顔で愛しい我が子と老猫を見つめる。  自身もタマとの別れを思うだけで、鼻の奥がツンと痺れたが、心配なのは瑞志のことだった。  両親を差し置いて作文に書くほど、愛情を注いでいるタマに何かあったら、純真な我が子はどうなってしまうのだろうと、朋代は気が気でない。  しかし朋代の心配をよそに、タマは気持ちよさそうにごろりと寝返りを打つ。さらにシンクロするように瑞志も、同じ方を向いた。 「もう人の気も知らないで……まったく二人とも可愛いんだからぁ!」  すかさずスマートフォンのカメラに収めて、撮ったばかりの画像を確認する。 「そう言えば、瑞志が赤ちゃんのうちは、よく寝相アートなんて撮ったっけ」  朋代はふと懐かしくなって、カメラロールから該当のフォルダを開いた。  まだ歩き出さないうちの瑞志が、タマと一緒に鯉のぼりになったりしている、季節ごとの凝った写真に、当時を振り返って笑みが零れる。  この角度がいい、これは光が駄目……と無駄にこだわって何枚も撮り直したものも、あとから見返せばどこがどう違うのかわからない。それすらご愛嬌だ。 「懐かしいなぁ。瑞志は大きくなって、タマは……昔の方が毛艶がよかったね」  温かくも、心がしんみりとして、また鼻の奥が痛くなる。  どうか少しでも長生きしてほしいと願いながら、朋代は懐かしい写真を何枚もスワイプした。  そして、ふと違和感を覚えて手を止めた。
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