佐々山電鉄応援団 第3巻

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 学校訪問と協働体制確立  翌日の放課後 僕と美佳ちゃん、西村さんと三人で沼川市に向かう。  僕は、昨日の研修会での意味が解らず困惑していた。  あの後、沼川市の沼川市のホームページを検索したら本当に研修会の講師の言う通り「沼川市地域公共交通計画」がヒットした。「人をつなぎ、地域を結び、暮らしを支える~みんなで育む沼川の公共交通~」 東日本旅客鉄道上越線・吾妻線及び佐々山電鉄、路線バスを沼川市のそれぞれ拠点間を結ぶ幹線軸を持続可能な持続可能な公共交通ネットワークとして構築すると記されていた。  研修会の講師が言っていたPT調査(パーソントリップ)や計画素案、地図を使った可視化データも確認できた。  近いうちに猿山さんにシステムを使ったデータ処理や見方、検証の仕方を教授してもらう事になった。  僕は渋沢実業高校生徒会に、その概要を見せて「教頭先生や岡田先生が馬鹿にしていて笑っていた内容がコレです」と示した。  形式上では、佐々山電鉄応援団と和解した事にはなっていたけど、やはり何処かで僕達を信用していない生徒会も「岡田先生は、単にアイデアを出させろって、お気楽に言っていたけど。こんなの出されても岡田先生が校長先生や行政に説明できるだけの技量があるとは思えなくなってきた」と目の前の現実を突きつけた事で、なんとか本当の意味で協力をして貰える事になった。  佐々山電鉄も沿線の学校も、最終意思決定者であり実行者である地域行政、公共団体の計画に沿わないと無力だと理解して貰う事で、沿線の二つの高校にも僕達が生徒会の代役で交渉に行く事になった。  僕はインスタントハッピーカンパニーのメイド服、美佳ちゃんと西村さんは渋沢実業高校の制服。 長谷川君が潜入で転入している群馬県立沼川工業高校に訪問した。  事務室には、高崎交通経済大学の中島先生の伝手でモビリティマネジメントの第一人者である埼玉土木大学の長瀞先生に一緒に同行して貰う手筈をとった。  長瀞先生は、大阪のオカンみたいな風貌。  本人は地元群馬から勤務先の埼玉県に通っているので生粋の関東人なのに、何故かヒョウ柄の服を好んできているので関西人みたいに見えるのが不思議だった。 「おう。メイドちゃん。飴ちゃんたべる?」  学生からもオカン先生と呼ばれているので本人も、なんちゃって関西人を装っている。 「なんか学校で大変だったらしいな。今は大丈夫なの?大変やなぁ」  この業界は、大学の先生も思考や考え方、持論が違うので頻繁に衝突が起きる。ゆえに、人間関係のトラブルは直ぐに伝わる。  長瀞先生は「その先生。メイドちゃんとホイホイ姉ちゃんをイジメるのに躍起で、インスタントハッピーカンパニーの批判をしたのが運の尽きだったわなぁ」と笑う。  美佳ちゃんは「ホイホイっていうな」と怒ったけど、直ぐに笑い出した。  沼川実業高校は、男女共学だけど男子校と言っても過言でないほど女子は少ない。 「うわっメイドさんだ」「他校の女子が何の用だ?」と下校中の男子が口々に僕達に興味を示す。  美佳ちゃんは、手を振ると男子生徒達が色めき立ち騒ぎ出す。  美佳ちゃんは「おい。いいな。此処ではアタシ。アイドル級に注目されてるぞ」  あの美佳ちゃんですら、お姫様扱いに御満悦な顔だった。  西村さんは、大人の余裕で「佐藤さん。へらへらしないの」とアイドル気分の美佳ちゃんに注意をしている。  事務室で面会の旨を告げ、応接室で生徒会顧問の先生と生徒会長と会う事になる。 「お待たせしました。顧問の田島です」  沼川工業高校には、土木科の担任の先生が話を聞いてくれた。田島先生という優しそうな先生だった。  長瀞先生は、業界では有名人。 「これはこれは御高名な長瀞先生」と初対面らしいけど、同じ土木知識を生徒に教える立場の教員ゆえ、直ぐにうち解けた。  田島先生は「ほう。モビリティマネジメントですか。面白そうですね」と興味深く長瀞先生の話を理解してくれた。  そして僕と美佳ちゃんにも田島先生は「良い経験をしましたね。教師といえども出世欲がある人間も居ますよ。大人には大人の理由があるのです。これから行政、議員、地域の人達と一緒に何かを成し遂げる為には、そういう人間との対処法も必要になるんです」  美佳ちゃんは納得してない。 「でも、アタシ達は酷い事を言われて信用が失墜してるし。優はうつ病で虚言癖があってアタシは我が強いって」と泣き出した。  長瀞先生は、逆に笑い出した。 「それ、学校って狭いエリアだけしか通用しない低俗な話。世間では何が本物で、誰が偽物かは直ぐに解る。その教頭とか岡田って奴は、自分達が表舞台に出てきた時に相手にされないよ」  群馬県立沼川工業高校の田島先生は「理由は理解しました。モビリティマネジメントの件はウチで取り組んでみましょう。そうですね。悪いようにはしません」  今度は、愛理が居る沼川女子高校。 今度は、完全な女子高。 メイド服の僕も、美佳ちゃん、西村さんも騒がれる事なく、事務室に迎えた。 ただ、進学校ゆえにモビリティマネジメントの件は難しいと言われた。  モビリティマネジメントの意義や優位性は相手にも伝わり、興味はありますがと言われながらもカリキュラム的に、授業の時間が取れないというのだ。
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