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「息子の方から会いたいと、連絡があったんです」  早田あかりは嬉しそうに真光寺君枝に言った。 「まぁ。それはよかったわね」 「それで明日、こちらへ来たいと言っているのですが、よろしいでしょうか」  遠慮がちに訊いたあかりに、 「あら。私もぜひ会ってみたいわ」  と君枝は弾んだ声で言った。  君枝にとって家政婦の早田あかりは身内同然のようなものだった。  あかりは息子が幼いときに離婚し、夫が息子を引き取っていた。月に一度、息子と会っていた。その息子の拓也が大学生になり自由に母親と会えるようになったので連絡をしてきたのだ。  母親が家政婦をしていることは父親から聞いていた。母と会ったときに、どんな家で働いているのかと訊いたら、 「真光寺さんって方のお宅よ」  とだけ教えてもらった。  その真光寺さんが天涯孤独の資産家だということは拓也は知らない。  拓也は伝えていた日時に遅れることなくやって来た。  あかりは君枝に息子を紹介した。拓也は温和な印象の青年だった。  あかりの手作りの菓子を食べながらいろんな話をした。君枝はすっかり拓也を気に入ったし、拓也も祖父母がいないので君枝が祖母のように思えて打ち解けた。  あかりと拓也と君枝は、まるで本当の家族のようになっていった。
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