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「そちらが山村華さん」
名を呼ばれ居住まいを正した山村華は、真光寺君枝に向かって、
「はい、山村華です」
と元気な声で応えた。
「元気がよくて気道の良い人ね」
君枝は優しい眼差しで華を見た。
「君枝さん、どうか華ちゃんの力になって下さい」
そう言って頭を下げたのは<虹の家>の所長の平川良久だ。<虹の家>は平川の父が始めた福祉施設で、行き場を失くした子や母子のサポートをしている。
「頭を上げてよ良久君。華さんのことは任せて。いくらでも支援するわ」
「君枝さん、」
平川は安堵の表情を浮かべた。
「本当にありがとうございます」
と華も頭を下げた。
「よしてちょうだい、華さん。あなたには類い希な才能があるのよ。みすみす眠らせておくなんて、私にはできないわ」
君枝は力を込めて言った。
君枝は、<虹の家>を創設するときにも資金を提供し、以後も寄付を続けている。そして時には才能のある子のために支援もしている。今回は山村華。彼女は医者を目指していた。
「私、必ず立派な医者になります」
華は君枝と平川に恩返しできるように、頑張らなくてはと、強く心に誓ったのだった。
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