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「いじめは人間としてやっちゃいけないことだけど、何人もの子供がクラスに押し込められて半日過ごしてりゃ、そりゃいじめくらい起きるってなもんだよ。いじめの発生自体防ぐのは無理。大人だってやらかすってのにさあ」
「そりゃそうだけど、でも」
「姉貴のその考えは“虐めはいけないことだ”から来るんじゃなくて“いじめが起きてトラブルに巻き込まれるのは嫌だ”から来てる。……本当に辛いのはいじめられてる子供の方だぞ。先生がそんな考えだったら、ますます被害者が追い詰められるだけじゃん。先生が味方になってやらなくてどうすんだよ」
「う、うう……」
それを言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
「それに、いじめまで行ってなくても、トラブルの発生は普通のことだから。……これは、あくまで予想なんだけど」
彼はちらり、と壁の方を見る。そこにはフックで吊るしてあるサッカーボールが。
優里と違い、雅は運動大好き少年だった。サッカークラブに通っているし、他のスポーツも全般的に得意だ。
「うちのガッコ、五月にドッジボール大会やってるよな?行事で」
「うん、まあ」
「その練習、自主的にやる奴多いんだよな。休み時間とか利用してさ。俺はドッジ大好きだし活躍できっから全然苦痛じゃない……むしろ楽しいくらいなんだけど、運動音痴の奴はどうなんかね」
「あ……」
その言葉に、私は絢子の言葉を思い出していた。
『ほんと困る。ドッジボール大会もあるのに、サボりばっかりで。ねえ、みんな?』
長い休み時間を利用して、ドッジボールの練習をしようと考えるのは自然だ。特に絢子のように、熱血で真面目なタイプは。
ドッジボールは、男女混合で、基本的に全員参加だ。
とすると、休み時間を利用しての練習に、優里を含めた全員が参加させられてもおかしくはない。ひょっとすると彼は、その練習でトラブルに見舞われたのか?
例えばうまくボールが避けられなくて、絢子にこっぴどく叱られた、とか。
「で、でも……休み時間のドッジボールが嫌なら、そっちをサボればいいじゃない。それに、何で次の授業をボイコットするのよ?」
「あのなあ。授業終わりに強制連行されたら、気の弱い男子は断れねえんだって。休み時間が終わってから教室に来る先生からは逃げられたとしてもさ」
「で、でも」
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