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彼が教室へ入った瞬間、雰囲気が変わった。
大声で雑談をしていた一軍女子は体の向きを変えず首だけで彼の姿を追いかけ、一軍男子は目も合わせようとはしなかった。
他の地味な子達に至っては俯き、彼の方向を見もしない。
クラスで私だけが頬杖をついて横目で彼を見ていた。
でも、彼はそんなクラスメート達のことをまるでいない存在のように前だけを向いて、席についた。
静かすぎる教室に、彼がカバンを机の横にかける音だけが響き渡っていた。
「はいじゃー気ぃ取り直して授業始めんぞー。」
また教師の間抜けな声が響くのを合図に、いつもの教室が戻ってくる。
私は髪で隠した左耳にワイヤレスイヤホンを取り付け、机の下で好きな音楽を選択する。
窓の外を眺めたり、ノートに落書きをすること約30分。
うるさいような、嬉しいような聞き慣れたチャイムが右耳から入ってきた。
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