約束の一万円

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『伸びるーーッ! 伸びていく! ……入ったーーッ!』  絶叫する実況。40インチのテレビの正面に膝を抱えて座った僕は、暗い部屋でダイヤモンドを一周するかつてのチームメイトを見ていた。  カーテンの端から差し込む強烈な夏の光は、画面の中でホームベースを踏み、仲間とハイタッチする真陽(まひる)に似ている。  9対1。勝負は最後まで分からないと、いつも監督は言ってたけど、真陽(まひる)率いるチームに逆転など有り得ないと断言できる。  テレビを消して、ベッドに寝転んだ。冷房はまだあまり好きにはなれていない。  あの約束を、真陽(まひる)は覚えているだろうか。
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