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 この時の私は彼女に夢中過ぎて、とにかく婚約の話をまとめたい一心だったので、まさかシャルルが隣国への遠征を申請し、なおかつ祝賀パーティーではファーストダンスを他の男に取られるとは微塵も予想しいていなかったのだった。    陛下の生誕祭に現れた私の女神は、想像の遥かに上をいく美しさで、ドレスを贈った事を酷く後悔した。  貴族の令息たちがシャルルに釘付けではないか――――普段から夜会に全く顔を出さない彼女が注目される事は分かってはいたけど、実際に下心だらけの男どもに囲まれる彼女を目の当たりにするととても平常心ではいられない。  それなのに私自身も久しぶりの夜会とあって、貴族女性たちに周りを取り囲まれてしまう。  一刻も早くシャルルの元に向かってダンスを申し込みたいのに、全く身動きが取れない。  香水の匂いが息苦しい……  私が何とかこの状況を打破しようともがいていると、一瞬だけ遠くにいるシャルルと目が合った気がしたのに、スッと目を逸らされた……気がした。
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