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 それだけで私は地面に溶けてしまったのではないかと思うくらい、全身の感覚が消え、そこから動けなくなってしまうのだった。  まさか彼女にこの状況を誤解されたのではないか?    一本気な彼女に遊び人と思われてはと、夜会にも参加せずに辺境伯領へせっせと通っていたのに……これはマズイ、何とかしてこの状況を打破して彼女のもとへ行かなければ。  ようやく抜け出せたと思ったら、私の目に飛び込んできたのは他の男と楽しそうに踊っているシャルルの姿だった。  普段から鍛錬を怠らない彼女は体の動きが綺麗で、流れるようなダンスを披露し、会場中の注目を集めてしまっていた。  一瞬ポーッと見惚れてしまう私だったが、そんな事よりもファーストダンスを奪われた衝撃の方が大きくて、すぐさまリヒャルトのところに向かう。  「リヒャルト、どういう事だ?なぜシャルルがファーストダンスをあの者と……」    私の気持ちも知っているのにどうしてシャルルのファーストダンスを許可してしまったんだ、と言わんばかりに私が詰め寄ると、焦ったリヒャルトが弁解してくる。
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