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 「一番最初のダンスは私が踊りたかったのに……何で挨拶に来てくれなかったの?」  「え、でも女性に囲まれて近づけるような雰囲気ではなかったので、不可抗力ではないでしょうか」  「……それで他の男と踊ってしまうの?」  先に踊られてしまった恨み節が止まらない私をシャルルはどう思っているのだろうか……せっかく今日は格好良くプロポーズを決めようと考えていたのに、そう思うとさらに残念な気持ちが襲ってきてしまって、年甲斐もなくいじけたような形になってしまう。  そんな私に追い打ちをかけるかのように彼女が”閣下”と呼んでくるので、これ以上シャルルとの距離を感じたくなかった私はアルフレッドと呼んでほしいと懇願する。  私のお願いにとても言いにくそうに 「…………ア、アルフレッド、様……」と呼ぶ彼女の可愛さたるや。    その時の頬を赤く染めながら言いにくそうに私の名前を言う顔が天使すぎて、愛おしくて、今すぐプロポーズしたいという気持ちに駆られた私は、彼女の耳元でサロンに移動しようと囁いた。  リヒャルトの許可も得てサロンに移動すると、鍵を閉めて邪魔が入らないようにする。
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