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 「私にしか出来ない?それは何でしょうか……お世話になっているアルフレッド様の頼みなら、出来る限り叶えたいと思いますが……」  そう言って騎士のポーズを取りながら、私の為に何かをしたいという意思を示してくれる。  好きな女性にこんな事を言われて嬉しくない男はいないだろうな。  彼女の場合、本当にそう思っているのだろうな。そんな気持ちが伝わってきて、いじらしいような愛おしい気持ちでいっぱいになった。  なんて純粋な女性だろうか…………こんなに清らかな精神を持つ女性が、この年齢まで誰とも恋愛をせずに身も心も清らかなままでいた、というのも奇跡的な事だと思う。  リヒャルトはシャルルの純粋な性格をよく知っていたから、日ごろから鍛錬をさせていたのかもしれない。自分の身は自分で守れるように、と。  そんな彼女の騎士としての矜持を私のプロポーズによって手折ってしまわないかと、とても不安になるのだが…………絶対に他の男に渡す事は出来ないし、覚悟を決めて彼女に口づけをしたのだった。    いつも見ているだけで食べてしまいたくなる唇にようやく触れる事が出来た。
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