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モノローグ
自身の素性も知らないまま、あたしは日々を過ごしていた。
神に酷く虐げられる毎日。それが幼い頃の記憶。
その神が、エンリルというお偉い神だったことは少女に成長する中で知ることになる。
少女に成長した頃には、自分が只者じゃないことに気づいていた。――だから、あたしは神に酷い仕打ちを受けても死ななかったのだろう。
崖から落ちようと、大火傷や致命傷を負ったとしても、あたしが死ぬことはなかった。時間経過で身体は癒え、元に戻る。人間に恐れられた。
だから、時には神に見つかって拷問を受けたりと色々大変だったけど、遠くへ行った。神の手の届かないトコを探して。幸い、飢え死ぬこともなかったから。
拷問を受けた際、少女へと成長したあたしに対して邪な考えを抱く輩に襲われそうになって、ソイツのことを叩きのめしてしまった。我を忘れて。やり過ぎたとは思ったけど、あのまま襲われてたらと考えたら不快過ぎて忘れることにした。――そうして、神の命令で拷問をしたその男を叩きのめしてしまったあたしは、気づかれる前に逃げた。
遠くへ何とか逃げ延びたあたしは、自然の中で、静かに長い時を過ごす。
そうして、1000年がたった頃。あたしは生まれ育った国、ニップルに戻る決意をした。
その途中、ウルという都市国家で、アンリルと呼ばれる少年と出会う。
空と風を合わせた名前を持つ彼は聡明で、優しい少年だった。
彼は、あたしを人として扱った。地位も権力も持たない彼と、波長が合った。初めて、人というモノを信用した。
そこで、初めて誰かを失う恐ろしさが、あたしの中に生まれてしまったんだ。
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