長嶺健太は世界一カッコいい

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 次の日、俺は教壇に貼られた席順の表を、朝早く登校して確認した。  ――彼女の名前は、大橋依花(ヨリカ)。    俺は昨日まで大橋が座っていた席に腰掛けた。すぐに大橋がやってきた。  大橋が俺に言う。  「ねぇ、長嶺くん」  「何?」  「相談して良い?」  「何で、俺に相談すんの?」  「長嶺くん、いい人だから」  「俺、いい人かなぁ?」  ――俺はいい人じゃないんだよと思う。  「いい人だよ」  「じゃ、それで」  「なにそれ?」  「大橋さんが、俺をいい人だと思うなら、それでという事で」  「うふふ。長嶺くんって、良い人で、ちょっと変な人だね」  「そうかぁ?」  大橋が机に、肘をついて顔を乗せた。  それで、いつもより大橋の顔の位置が下がって、俺は大橋を初めて上から見た。    大橋が上目遣いに俺をみる。  「うん、あのね」  ――ドキッとした。  可愛いと思った。大橋は、想像以上に可愛かった。    俺はトキメイたことを悟られていないか心配しながら尋ねた。  「何?」  「……みんなには内緒だよ」  ――内緒と言う言葉に、俺はまたドキッとしてしまう。心臓が壊れそうだった。  「私ね。芸能事務所の人に、道でスカウトされて……」  「え? 本当に、道でスカウトされるとかあるの?」  「うん、怪しくない?」  「確かに、怪しいな」  「私、可愛くないし。背が高いし。デカいのに……。スカウトされるなんて意味分かんないよ」  「見せて」  「何を?」  「スカウトの人に、連絡先とか貰ったんでしょう?」  大橋が紙切れを見せてくれた。俺は紙切れをじっくりと見た。  「検索してみるか?」  俺が携帯で検索しだす。大橋が不思議そうに聞いてきた。  「リンクから飛ばないの?」  「リンクから飛んだら危ないだろう」  「そうなんだぁ」  俺は苦笑いした。  「大橋は、危なかっしいな。大丈夫か?」  「うん……、私。大きいせいで、見た目はしっかりものみたいに見えるけど、違うんだよ」  「なぁ、大橋。背が高いの嫌なの?」  「嫌だよ」  「そうかぁ。俺は背が高くなりたいのにな」  「長嶺くんは、身長はいくつなの?」    言いたくないが答えた。  「……153センチ」  「大橋はいくつ?」  「……1……。えとぉ1……」  大橋は1から先が言えない。言いたくなのだろう。  「良いよ。言わなくて」  大橋顔を真っ赤にして「うん」と言った。  俺は芸能事務所のホームページを見つけて、大橋に見せた。  「これ見て。斎藤尚也とか、朝霧萌絵も所属してる大手みたいだぞ」  「本当だぁ」  「俺は、大橋は可愛いって思う。背も高いしモデルとか出来そうだし。やってみたら?」  「私が? モデル? 出来るかな?」  「出来るよ。自信持っていいよ。大橋なら大丈夫だ」  大橋が戸惑いながらも、笑顔になった。  それから俺は大橋と、学校でよく話しをするようになった。
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