第一章

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翌日。 登校すると、いつも通り嗤われた。 慣れてしまった、日常。 黙って席に向かう。 机が、汚れている。 可愛いキャラクターが描かれてあるわけでも、優しいメッセージがあるわけでもない。 少しだけ、ほんとうに少しだけ。 期待したわたしが、馬鹿だった。 机にかかれていたのは、悪口の数々。 ………教えて、ほしい。 わたしは、死ねと言われるほどに。 ひどいことをしているのでしょうか。 ズルと言われるようなことなんか、ひとつもしていないのに。 わたしは、なぜ。 なぜ、ここにいるの。 もどりたい。 もどりたい。 あの、ともだちと楽しく過ごしていたころに。 なきたい、 でもそれは。 負けるのといっしょ。 ここで、泣くわけにはいかない。 涙を堪えて、机の落書きを消した。 ぼろぼろと崩れる消しゴム。 まるで、わたしのこころのよう。 くるしい、かなしい。 滲む涙を、手でこすって。 わたしは、そのまま授業に参加した。 あれくらいじゃ、ダメかーと言う声が聞こえる。 学校に、行きたくない。 でも……… もう、家族に心配をかけたくない。 でも……… もう、家族に心配をかけたくない。 その一心で、私はそれからも通った。 ことばの、刃。 毎日汚される机。 限界は、超えている。 自分でも、わかっているけれど。 分からないふりを続けた。 学校に行って、帰って。 そんな生活だけ。 まわりは、遊びに行こう!と言っているのに。 わたしは、ひとりで遊びに行くこともできない。 「おかえりー!友だちはできた?」 「学校は、たのしい?」 ともだち、できてないよ。 学校、たのしくないよ。 「うん。たのしいよ!」 お母さん、きづかない? わたし、ここに来てからともだちを一人も連れて来てないよ。 ともだちと、遊びに行くねって言ってないよ。 わたしは、いつまで嘘をついたらいいの。 なみだを、のみこんで……… わたしは、今日も残酷なうそをつくしかない。 お母さん。 お姉ちゃん。 お父さん。 言ったら、楽になるの? 苦しいって。 悲しいって。 もう、きついんだって。 あの場所に、戻りたいって。 言いたいよ。 言えないよ。
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