二周目:秋。さあ、恋をはじめましょう。

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 私は歩きながら、さっき瀬利先輩の見せてくれたアプリの名前を思い返し、そのアプリの内容について検索をかけはじめた。  公式サイトには、先程瀬利先輩から見せられた宗教じみた説明しか書かれていなかった。このアプリ、普通の人だったら、まずしないんだろうな。だって説明文が怪し過ぎるんだもの。  大型アプリサイトではインストールすることができない。多分、この手のサイトに登録するには、アプリの内容が怪し過ぎるからだろう。  検索を続けてみたら、このアプリのレビューサイトや考察サイトが見つかった。 【ハーレム製造アプリ】  【癒やされる、これのおかげでうちの会社も安泰】    【本当にこれだけ幸せでいいのかって思う】  男性陣から概ね好評なようだけれど、女性陣や一部の男性陣からは非難囂々となっている。 【勝手に人を不幸認識しないで欲しい】  【なんでハーレム要員にされないといけないの。ここ日本だから、一夫多妻制じゃないから】    【私をここから出して】  どうにもこのアプリは、知る人ぞ知るって感じで、表だって有名なアプリではないらしい。そりゃそうか。こんなアプリが表立って宣伝されてしまったら、男対女の戦いがはじまってしまうし、不毛過ぎる。  そしてこのアプリの対処法も出てきた。 【一見対処がないように見えるけれど、このサークルの中に組み込まれた場合、規定数越えてしまったらもうサークルの中に入れられない】  【規定数って?】   【何度も何度も周回させられるの。それにアプリを使っている人間だって、何周もしてたら息切れしちゃうから、相手を疲れさせるか、規定数周回させて、もうこれ以上は周回できませんってロックかけてしまったら、逃げられる】   【でも覚えていないんでしょう?】  【こればっかりは、アプリ使用者が設定をトチるのを待つしかない】  どうにも、私が前のときの記憶を持ち越してしまったのは、完全に篠山くんがミスったことが原因らしい。本当に運とか確率の問題だ。  嘘か本当かわからない内容だけれど、これを全部嘘とか冗談で済ますには気持ち悪いことが多過ぎた。今だって「人の人生をなんだと思っているんだ」と気持ち悪くて仕方ないけど、原因が特定できたら、そこまで得体の知れない恐怖はない。  頑張って逃げよう。なによりも、「これが自分たちのためなんだ」と思い込んでしまっている子たちが可哀想だ。  だって、全員を平等に大事にするなんてこと、たくさんいたらできるわけない。  一夫多妻制が普通の国の人たちだったらともかく、今の日本で、そんなことできる人がいるわけないじゃない。
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