二周目:秋。さあ、恋をはじめましょう。

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 なんでだ。  俺はスマホを黙って触って、アプリを見る。 【周回が規定数越えたので、ルートはロックされました】  ちょっと待てよ。ルートがロックされたのはわかる。記憶が消えているのは、いったいなんで。  そもそも。佐久馬をパートナーに固定しておいたのに、いったいどうしてこんなことに。俺は颯爽と去って行ってしまった佐久馬とスマホを見比べるけれど、頭の中がぐちゃぐちゃして、いつものように上手く運ばない。 「そりゃそうだろ。【悠久の放課後エデン】で天文部を指定してアプリをプレイしていたのが、光太郎だけだったら、もしかしたら上手くいったかもしれねえけど」  その声に、俺はちらっと顔を上げた。  思えば、俺はいつもかごめ先輩のミスで、失敗していたような気がする。  かごめ先輩は、よくも悪くも快楽主義で、普段から自分に都合のいいことしかしないし興味を持たない。だからなにをされてもどうせ悠久エデンルートに入ってしまえば同じと思って放っておいたけど。  かごめ先輩はけざやかに笑い、ひょいと自分のスマホを掲げて見せた。 「あたしもやってたからさあ。【悠久の放課後エデン】に天文部を指定して、繰り返し繰り返しやるの。パートナー指定をぜーんぶ光太郎にしておいたんだよ。他の奴ら無視して光太郎固定でやってたから、パートナーは光太郎固定だったから、光太郎が同じようにプレイしていても何度やり直しても記憶は持ち越せるし、あたしも全部の記憶を持ち越せてた。で、他のルートをわざと失敗させてロックかけていった。さっき由良のルートを失敗させてからな。攻略失敗したから、あいつのルートにロックがかかって持ち越した記憶も消えたんだろ」 「……なんで、こんなことをやったんですか?」 「決まってんだろ。他の女の尻ばっかり追いかけてるより、もうあたしにしちゃえばいいじゃん」  そう言ってペロリと形のいい唇を舐めてから、俺のものを唇で覆う。  ざらりとした舌の感触、瑞々しい体臭。全部かごめ先輩のものだ。  ああ、そっか。この人、快楽主義は快楽主義でも、一途だったのか。今更ながら気が付いた。  もう、他の女子を助けることはできない以上、ここで俺も治まるしかないのか。  助けを求めていたはずの子たちをもう助けることはできない。もうかごめ先輩に捕まってしまったから。もっと嘆き悲しめばいいのに、何故か痛快な気分になっているんだから、俺は相当かごめ先輩に骨抜きにされていたという訳だ。
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