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(どうせ、自身の実家の権威を確かなものにしたいだけだろう)
彼女の家は、ここら辺では歴史のある豪族だ。今までにも王室に何人か女性を送っている。
が、いや、だからこそ。彼女の家は傲慢だった。
メルレインはそれを知っている。自身に媚びてくる祖父の顔を見れば、それくらいは容易にわかるのだ。
「ダメです。あなたの直系でなくては、なりません」
このままでは、いつもの言い合いが始まってしまう。
心の中だけで舌打ちしつつ、メルレインは側にいた男に時間を尋ねる。……もうそろそろ、客人が来る時間だ。
「そうですか。ですが、生憎、この後来客の予定がありましてね。……一旦、引いていただきたい」
とんとんと王座のひじ掛けを指でたたいてそう言えば、母がぐっと唇を噛んだのがわかった。
「来客とは、何処の誰ですか? 母の意見よりも、大切なことを言うお方で?」
……もう、呆れてしまう。
こういうところが、メルレインが母を苦手とする要因だった。
傲慢で強欲。挙句、強引に自分の話に持っていこうとする。話がかみ合わないことだって、よくあるのだ。
「えぇ、そうですね。……本日、他国の姫がこちらに来る予定なので。なんでも、俺と直に話しがしたいと」
「……よくもまぁ、他国の姫などとの話を受け入れましたね。どうせ、援助のお話でしょうに」
「そうだったとしても、ですよ。……話を聞くくらいは、ただですからね。援助をするかどうかは、別問題ですが」
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