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宮殿につき、アルティングルは見張りであろう兵士に声をかけた。
「本日、陛下に謁見をお願いしております。ナウファルのアルティングルと申します」
軽く頭を下げてそう言えば、兵士はなんのためらいもなく深々と頭を下げる。
「お待ちしておりました」
彼がすぐにそう言ったことに、アルティングルは驚く。
だってまさか。兵士にまで自分の訪問を知られているなんて、思わないじゃないか。
「陛下が応接間にてお待ちになっております。……ご案内、させていただきます」
兵士にそう声をかけられて、アルティングルは控えめに頷いた。すると、その兵士は別の見張りの兵士に声をかけ、宮殿の豪華な門を開ける。
「では、行きましょうか」
「は、はい……」
彼に言われるがまま、アルティングルは宮殿の中へと足を踏み入れる。
(……わぁ、なんて、美しいのかしら……!)
宮殿の中は、まさに豪華絢爛という言葉が似合う空間だった。
むしろ、この空間以上にその言葉が似合う空間など、アルティングルには想像もできない。
きょろきょろと宮殿の中を見渡していれば、兵士に「アルティングル殿下」と名前を呼ばれた。
そのため、ハッとしてアルティングルは視線を彼に向ける。
「あ、あの、申し訳ございません。なんというか、素晴らしい空間だと思ってしまいまして……」
肩をすくめてそう言えば、兵士は「いえいえ」と言いながら手を横に振る。
「いらっしゃったばかりですと、皆さまそんな反応でございますよ。……ただ、陛下の前では、あまりそういう風な態度は取られないほうがいいかと」
「そ、そうですよね……」
どうやら彼はかなりフレンドリーな性格らしい。
それを察しつつ、アルティングルは彼に連れられるがままに宮殿内を移動していく。
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