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「これから未来永劫、僕には君だけだ。君だけしか選ばない。選べない……」 「うー……」  自分を組み敷き、生殺与奪の権を持っているのはむしろそちらだろうに、グノーシスは弱々しくつぶやいた。トトにはそれが、脅しのように聞こえる。 「もちろん、トトは気にしなくていいんだよ。君は好きなように生きればいいんだ……。僕のことなんて気にもとめずに……」  儚げに微笑みながら、グノーシスはトトに万歳のような格好をさせると、ワンピースの裾を捲って、頭からすっぽり脱がしてしまった。  下着姿になったトトは、庇うように自らを抱き締める。 「見ないで……ください」 「なぜ?」  自信満々のこの男は、自己肯定感の低い少女の気持ちや恥じらいなど、さっぱり分からないのだろう。だから訴えを聞き流し、グノーシスはトトの腕を掴んで剥がすと、凹凸が乏しく細いその体をまじまじと鑑賞した。 「わ……! こ、後悔してるでしょ……! こんな痩せっぽちで貧相な体つきの女の子じゃ、楽しめないって……!」 「いやいやいや。いやいやいや!」  一人でぎゃんぎゃん吠えるトトの背中に、グノーシスは手を回すと、素早く器用にブラジャーの留め具を外してしまった。そのままカップをずり上げ、悲しいくらい平らな裸の胸にちゅうっと吸いつく。 「きゃっ!」  驚いたトトは体を竦ませるが、グノーシスは構わず乳首を口に含んだまま、桃色の輪をねっとり舐めた。 「や、だ……っ!」  男性に――しかも意中の相手に、自分の体を見られたりさわられたりそれ以上のことをされるのは、想像していたよりずっと恥ずかしかった。  いったい今、自分は、どんな表情をしているのだろう。手の甲を瞼に当て、トトは顔を隠そうとする。 「ダメだよ、トト。可愛い顔を見せてくれたまえ」 「だ、だから、可愛くなんてないって……!」  こんなに何度も言っているのに。この人は目が悪いのか、それともブス専なのだろうか。  グノーシスはトトの胸に舌を這わせたまま、ついでにもう片方の乳首を親指の腹で撫でつつ、言った。 「君はとても可憐で、それでいてかっこいいのだよ。知らないのかい? 呪術に没頭しているときのキリッと凛々しい顔つき。客に感謝されて、照れたように笑ったときの愛らしさ。そんな君をずっと見ていたくて、僕は『呪術を広める会』のスポンサーになったのだからね!」 「う、うそ……!」  トトの全身がカッと熱くなったのは、受けている愛撫のせいだけではないだろう。  それにしても、体が妖しく疼く。最初はただ不快だったものが、淫らな刺激に変換されて、トトの頭から爪先まで駆け巡った。 「気持ち良さそうだね、トト。うんうん。豊満であることだけが、女性の魅力ではないよ。男からの奉仕に素直に応えてくれる体こそが、極上だと、僕は思うね」 「うっ、ううう……!」  右の乳首も左の乳首をべろべろ舐め回され、息も絶え絶えになっているトトに比べて、グノーシスは随分冷静だ。トトに拒絶されたら後がない――伴侶を得ることは叶わないのに、この余裕はいったいどこから来るのだろう。己の技ならば必ず女を陥落せしめんとの自負があるのだろうか。  そういえばグノーシスは以前、「長年培ったテクニックを余すところなく使い、全力で君にアタックしている」などと言っていたが。――そういうことか。 「……もしかしたらグノーシス様は、女の敵なのでは?」  トトはグノーシスと過去に交わった女たちのことを想像し、勝手に腹を立てた。 「こ、これからは、君だけだから……」  愛しい少女から嫉妬の気配を感じ取ったのか、グノーシスは誤魔化すようにごにょごにょ言い淀みながら、トトの股間を覆っていた下着を剥ぎ取った。縦の溝を優しく開き、途端にとろとろと零れてくる蜜を、美味しそうに舐め取る。 「やっ……! そこは……汚い……です……っ!」  閉じようとする太ももを、グノーシスは逆に広げるように押さえつけ、ますます深く顔を突っ込んだ。膨らんだクリトリスを舌先でちろちろとくすぐり、愛液を吸う。  じゅるっとわざと立てられた卑猥な音が、トトの羞恥心を煽った。 「やっ、いやっ、恥ずかしい……! 舐めたらいやです……っ!」 「そうなのかい?」  べたべたに汚れた口元を拭いながら、「それなら」と、グノーシスは中指をトトの膣に挿し入れた。 「ひっ、あ……っ!」  初めて咥え込む異物に戸惑い、硬い感触だったトトの内側は、しかしすぐに慣れると、もっともっととせがむようにグノーシスの指に絡みついた。 「ああ、すごいね、トト……。すごく濡れてる。嬉しいよ」 「バカ……!」  グノーシスの指はいつの間にか二本に増やされ、突くというよりは肉壁を撫でるように、柔らかく動いている。 「可愛い……。本当に可愛いね、トト。大好きだよ……」  グノーシスはトトに指を食わせたまま、コリコリと硬くなった彼女の胸の頂きを甘噛みした。  耐えきれず、トトは達してしまう。 「あっ、あっ、あーーーー……っ!」  目が眩み、頭の中が空っぽになる。  ――なにもかも弾け飛んでしまった。  ブスだとか地味だとか根暗だとかの、自己嫌悪も。  ずっと抱いていた、グノーシスとは釣り合わないんじゃないか、という不安さえも。 「好きだ。愛してるよ、トト」  いつもならば絶対に信用しないそのセリフも、今はすんなりと入り込んでくる。 「グノーシス様……」  トトからとろりと濡れた無防備な目を向けられると、それが合図のように、グノーシスは服を脱ぎ捨て、筋肉で盛り上がった精悍な体を晒した。 「さて……。蛇くんをどうしたらいいのかな?」 「……………………」  トトは恐る恐る手を延ばし、グノーシスの中心にて天を指す男根に触れた。すると、その根本に巻きついていた朧の蛇はぐにゃりと崩れ、空気に溶けるように消失してしまった。 「おお、いなくなった! これが君の薬の威力か! あの蛇の奴、我が物顔でずーっと僕の股ぐらに居座っていたのになあ! 呪術の力はすごいものだ!」 「しばらくしたら、また戻ってくると思いますが……」 「じゃあ、急がないと。いやあ、一週間も溜め込んだから、金玉がパンパンでね」 「げ、下品です……!」  グノーシスは軽口を叩きながら、トトの膣口にペニスを当てた。キンキンに熱く硬いそれは、鍛造されたばかりの鋼のようだ。 「んっ」 「痛いかい?」 「少し……」  侵入半ばで止まると、グノーシスは自身がトトの体に馴染むのを待った。  大事にされている、優しくしてもらっている。――ならば耐えられると、トトは思った。 「グノーシス様。もう大丈夫、です……」  グノーシスは頷き、腰を進めた。全て収めてしまうと、トトを抱きかかえ、膝の上に乗せる。  二人は互いの目と目を見ながら、繋がりを深めた。 「こ、これ……! 恥ずかしい……です……っ!」  眉目秀麗なグノーシスの顔が間近に迫り、トトは焦ってしまう。 「んー? 僕はトトと見詰め合いながらセックスできて、最高だけどなあ」 「んっ、そ、そんな……っ!」  トトの様子を伺いながら、グノーシスは腰を突き上げる。緩やかに揺すぶられているうちに、トトは自然にグノーシスの首に腕を回し、縋りついた。  ――生まれたときからあったのに、意識したことも使ったこともない器官を、たくましい雄の塊に擦り上げられている。  痛い、苦しい以外の新たな感覚が、トトの中に生まれつつあった。 「変、です……! こ、れぇ……! おかしくなる……っ!」 「ああ、とてもセクシーだよ、トト」 「そういうこと言うの……っ! 本当にもう、やめて……ください……っ!」  もう耳を取ってしまいたい。トトは泣きそうになった。 「すごく、いい……。君は最高だ……!」  トトの尻を掴み、下から腰を打ちつけては離れて――。息を乱すグノーシスは、気持ちが良さそうだ。彼を快感に酔わせているのは自分なのだと思うと、トトは誇らしくなる。  やがて一際深くトトを貫き、グノーシスはしばし動きを止めた。 「んっ……」  グノーシスが唸ると同時に、トトに打ち込まれた太い楔がひくひくと痙攣する。  終わったのだ。トトは脱力した。――が。  去ることなく、グノーシスはトトの上半身を長椅子に倒した。 「えっ!?」  トトの足首を持って彼女の足を大きく開くと、グノーシスは腰を前後させた。  再び入り口から奥までを嬲られて、たまらずトトは掠れた悲鳴を上げる。 「ちょ、え、あっ! や、やあっ!」 「すまない、トト。一回じゃ満足できない。ほら、ずっと禁欲してたから」 「やっ、もう、無理……っ!」  荒々しく陰茎が出入りすれば、トトの性器に溜まっていた体液がかき混ぜられて泡立ち、結合部からだらしなく垂れる。  先ほどとは打って変わり、グノーシスの行為は強引で乱暴だった。しかしなんだか奇妙に心地良い。ゾクゾクする。――めちゃくちゃに壊して欲しいと、トトは思ってしまう。 「トト、愛してる! これからずっと、君は僕に犯され続けるんだぞ! たっぷりと! 孕むまで! 子供を産んだあとも、年老いても! ずーっと! ずーっとだ!」 「えっ!?」 「もちろん、君が嫌ならいいんだ! 僕一人が寂しく我慢すればいいのだからね。寂しく我慢すれば。寂しく我慢すれば!」  哀れな泣き言を、だが内容に沿わないハキハキとした調子で三回も繰り返し、グノーシスは不敵に笑った。 「うーーーーーっ……!」  ――しまった。トトはようやく全てを理解し、歯噛みした。  蛇の呪いによって逃げ場をなくし、鎖で繋がれたのは、グノーシスだけではない。  ――私もだ。  同情と哀れみと、そして彼をそのような立場に追いやったという罪悪感と――そして「関わったからには、最後まで面倒をみなければ」という呪術師としての義務感や責任感。それらの感情が重い鎖と化し、トトはこれから先、グノーシスに縛りつけられるのだ。  きっと、死が二人を分かつまで。  そう悟った瞬間、肉洞は不規則に収縮し、絶頂の波がトトに襲いかかってくる。  ――ずっと一緒……! グノーシス様と、ずっと……! 「うっ、あああああん!」 「あっ……!」  欲望の証を搾り取ろうとするいやらしい蠕動に負けて、グノーシスは再びトトの膣内にたっぷりと精液を吐き出した。
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