巖頭(いわお)館へようこそ

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「それでは、一色(いっしき)鳴海(なるみ)、歌います!」  その広間の壇上に掲げられた「碑」に向かって鳴海が宣言したのは、もう真夜中だった。 「……やっとですか」  観客……もとい、親族の6人からはまばらな拍手。げんなり感しかない。 「棄権させりゃいいものを。資格者全員がかくし芸しなくちゃいけないなんて」 「この鵙尾(もずお)家の財産を継げるのは、『碑』の連中に一番ウケた奴というしきたり」 「碑」と呼ばれた石の塊からは、いくつも煙のような影が騒がし気に立ち上っている。 「退屈してるんだよなあ、ご先祖。たまのこういうイベントに大盛り上がり」 「彼らに時間の制約はないし、一つでも多い芸を見たがってるんだから……しかたない」  誰もがウンザリする中、鳴海一人が目を輝かせ、両手を組んで息を吸い込んだ。
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