1人が本棚に入れています
本棚に追加
母を早くに亡くして施設で育った鳴海は、夫にも先立たれ、自分は天涯孤独だと思っていたようだ。血縁があるらしいという連絡で喜んでいたし、パート仕事は持っているものの、金銭的苦労のない老後という未来があるならその方がいい。
「歌?」
「そう。歌くらい歌えるでしょ」
「わかった。歌うわ。でもそれには準備が」
やっとやる気になってくれた鳴海だが、「まずは手足ほぐしから」とのたまって、……「え」と一同が固まった。先ほどのコーヒーの準備具合を皆、目にしている。嫌な予感がよぎったのも無理はない。
最初のコメントを投稿しよう!