巖頭(いわお)館へようこそ

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 母を早くに亡くして施設で育った鳴海は、夫にも先立たれ、自分は天涯孤独だと思っていたようだ。血縁があるらしいという連絡で喜んでいたし、パート仕事は持っているものの、金銭的苦労のない老後という未来があるならその方がいい。 「歌?」 「そう。歌くらい歌えるでしょ」 「わかった。歌うわ。でもそれには準備が」  やっとやる気になってくれた鳴海だが、「まずは手足ほぐしから」とのたまって、……「え」と一同が固まった。先ほどのコーヒーの準備具合を皆、目にしている。嫌な予感がよぎったのも無理はない。  
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